こんにちは。
ながとです。
脳梗塞の後遺症の1つに「失語症」があります。
脳梗塞後発症後に、症状が安定してきたら、回復期病院(リハビリメイン)の病院に転院するのが一般的です。
約6カ月、私達言語聴覚士(以下ST)が「言語療法(ことばのリハビリ)」行いますが、期間が来たら在宅に戻る事になります。
(在宅が難しくて施設に入所する事もあります・・・)
在宅に戻ったら、「STとリハビリが出来ない・・・どうすればいいんだろう」と思います。
今回は、わたし「訪問ST」が実際に失語症の利用者さんに行ってもらっている事案も出しながら、「自宅に戻ってから、自宅で出来る失語症のリハビリ」について話していきますね。
目次(読みたい項目に飛ぶ事も出来ます)
失語症 自宅でのリハビリはどう行えばいいの?
さて、自宅に戻るとほとんどを家で過ごす事になります。
病院の時と違って、沢山の「会話によるコミュニケーション」がないと生活が成立されない事があります。
例えば、①電話に出る事、②隣近所の人が訪ねてきた時の対応、③他愛もない会話なんかがありますね。
殆どが③の他愛のない会話がほとんどだと思います。
他愛のない会話とは、例に挙げると「飲み物、お茶でいい?」→「うん」なんかです。
失語症という障害は、極々当たり前だった「話す事で成立する事柄」全てが上手くいかなくなってしまいます。
コミュニケーションの取り方を誤ると、失語症の方のストレスがたまるだけでなく、お互い壁が出来てしまい亀裂が走ってしまう事も。
ここで大切になってくる能力が2つあります。
②言葉を話す事
です。
他にも新聞を読むために必要な「文字を読む力」や年賀状や手紙を書くのに必要な「文字を書く力」もあります。
が、今回は上記の①・②の事を話しますね。
この2つの力が重要になってくるので、自宅で出来るリハビリも、この2つを重点的に行っていきます。
失語症の会話を理解する能力を鍛える
会話を理解する能力を鍛えるのね!じゃあ、ラジオやテレビをガンガン流してその会話を理解・・・ではありませんよ!
会話は2~3語レベルの「短い文」(私達は短文レベルと言ってます)でちょうどいいのです。
例えば
ぐらいが、失語症の方には理解がしやすいです。
短い文でも理解が難しい時は、ホワイトボードで「文字(単語)」を書きながら伝える事も出来ます。
補助道具+言葉で失語症の方の会話を理解する力を鍛えていきます。
私が行うリハビリの1つもお伝えします。
日常生活で使う単語(例:クシや歯ブラシ、椅子など)写真カード6枚を、2列3枚ずつに並べて、「歯ブラシはどれ?」と単語の名前をランダムに聞いていきます。
1回当たっても、繰り返し単語の名前をランダムに聞いていくと、失語症の方は集中力がどんどん切れていきます。
休憩をはさみながら、行っていきます。
家族に上記の内容をやってくれとは思っていません。
できれば、家族であるあなたは、ゆっくりと失語症の方と会話をしてください。それだけでいいです。
失語症 言葉の練習
失語症のリハビリを通して、回復していく中で最後まで残るのが「言葉が中々出てこない(喚語困難と言います)」事です。
失語症の中核症状であり、この能力の回復がどこまでいくかで、その後の本人のやる気に関係してきます。
一番メジャーなリハビリは、絵カードの呼称(絵カードの名前を言う)の練習です。
でも可愛いイラストや、本人の生活に全く必要がないもの(例えば、立て看板の絵カードや、マンホールの絵カード)を練習のカードにするのではなく、なるべくご自身の生活の身近にある物の写真を使って練習する事が多いです。
失語症のリハビリに使える教材はこれだ!
上記では、写真カードを使用した練習をご紹介しました。
でも、その他にも教材があると嬉しいなと思いますよね。
ここでは、私が今現在使用している教材をご紹介します。
市販のものを使っていますが、工夫すれば立派な練習道具にもなる優れものです。
失語症訓練のためのドリル集(第1巻) 語想起(名詞)の改善をめざす [ 竹内愛子 ]
ST御用達ドリル集の第1巻です。
このドリル集は全部で9巻ありますが、この第1巻が一番の肝である「単語レベルの言葉の想起を目指す」事を目的に作られています。
言葉の写字(言葉を写す課題)、単語の名前と絵のマッチング、動作と単語の結びつき・・・といった失語症の方の苦手な能力である「喚語困難」をメインです。
もう・・・私は1年目の時から重宝しています。
自主練習にちょうどいいんですよ!
コピーすれば何度も使う事が出来ますし、基本的な使い方から応用の使い方まで丁寧に書かれています。
失語症と向き合う事が回復の鍵
最後に、自宅での言葉のリハビリで、もっとも大切な事を話しますね。
上記では沢山の事を話しましたが、言葉のリハビリで一番大切な事は「本人のやる気」なんです。
家族の力ももちろん大切です。
しかし、本人の「もっと良くなりたい!」という気持ちが回復を左右させます。
実際に、在宅の言葉のリハビリを通してみていると、「もっと良くなりたい!一人で出来るようになりたい!」という気持ちが強い方の方が、自主練習にも積極的取り組むんです。
私が出す課題以外にも、「こんな事をしてみた」とノートに単語を書いたり、日記を書いたり・・・私いなくてもいいじゃない!(笑)と言えるくらいです。
私達セラピストは、魔法使いではありません。
失語症は風邪のような病気ではないので、セラピストには治せません。
でも、改善する事は出来ます。
本人のやる気を引き出す為にも、家族が失語症にぶつかっていかないといけない時があります。
改善のカギを握るのは、私達セラピストではなく「本人の気持ち」になる事を忘れないでほしいです。
失語症の自宅でのリハビリ まとめ
今回は、失語症の自宅でのリハビリの話でした。
セラピストがいない環境は、不安だと思います。
ですが、あなたが失語症を理解して家族と向き合えば、きっといい方向に向かいます。
失語症と向き合う家族は、私の支援がなくてもしっかりと自主トレーニングを行っています。
もちろん長い時間をかけたと思います。
でも、自宅で少しでもリハビリを続けていけば、失語症は改善していきます。
この記事があなたに少しでも役に立てたら幸いです。
それでは。
以上です。
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